「恋愛の作法」高橋龍太郎

意外に良かった。

自己啓発に警鐘を鳴らす自己啓発本とでもいうか。

 

高橋クリニックの高橋先生は「私の心は壊れてますか?」などの本で、先生自身の自分探しの振り返りや、青年の自分探しについて書いていた。

 

今回は女性向けである。おそらく宇野千代の昔の本「恋愛作法」を重ねていると思う。タイトルが似ているのも。

昔と何が違うか。

女性の置かれた立場が変わった。環境が変わった。

その中でもがいて生きている女性達を意識して書かれている。

 

つまりこれは昭和発・現平成の総合職スタート以降の世代で、

自己実現」に載せられて結婚を逃してしまった ー というより ー これから逃してしまいそうな? 女性に向けてのエールと感じた。

 

香山リカ氏が50になったのが2010年。その数年前から香山氏は赤裸々に出産しなかったことを悔やんでいることを正直にカミングアウトする本を出していた。総合職第一世代として後進の女性たちへの道を切り開くために「これだから女は」と言われないように仕事に真面目に邁進してきて、ふっと気がついて周りを見渡してみれば・・・、という心境や矛盾した環境を綴っていた。

 

「恋愛の作法」は2009年に刊行されてる。

高橋クリニックにも多くの40代のキャリアウーマンが訪れていたのだろう。なんか危機感のようなものを感じたのかもしれない。本では説教がましい口調は一切ないが、その配慮がまた、「お節介爺の戯言ですが」的配慮がまた、実は「是非、耳に入れておいて欲しい」という親心のようなサムシング(エニシングか?)を感じる。

 

女性に向けて書かれているのだが、これが男にも身につまされる。

というか、

要するに仕事が自己実現であるかのような流れに巻き込まれて何かを見失った。喪失感でウツになってしまった女性。

というのは、男性も自分の姿を重ねて考えないわけにはいかないのである。という感じだろうか・・・。

 

「現代の草食男性にはむしろ女性の方から積極的に襲いなさい」というススメとかはやんわり冗談めいた表現にはなっているのだが、この辺りが宇野千代さんの書いた時代と現代の女性の置かれた環境の違いを浮き彫りにして、この本が現代に問う価値を表していると思う。